経口免疫療法

定義

経口免疫療法(Oral Immunotherapy, OIT)とは、「自然経過では早期に耐性獲得が期待できない症例に対して、事前の食物経口負荷試験で症状誘発閾値を確認した後に原因食物を医師の指導のもとで経口摂取させ、閾値上昇または脱感作状態とした上で、究極的には耐性獲得を目指す治療法」をいう。

食物アレルギー診療ガイドライン 2016

問題点

治療上の問題点

  • 一部の症例には治療効果はあるがエビデンスレベルは低い。
  • 経過中の症状誘発は必発である。
  • 予期せずアナフィラキシーを引き起こすことがある。
  • 経口免疫療法を終了した後に、治療対象の食物の摂取により症状が誘発される場合がある。

我が国での問題点

  • 倫理委員会での承認を受けずに研究的診療として実施している施設がある。
  • 治療経過中の安全対策の不備が見受けられる。
  • 症状誘発の閾値が不明である症例に対して自宅で摂取量を増量させる指導を安易に行っている。
食物アレルギー診療ガイドライン 2016

実施する際の注意点

  • 食物アレルギー診療ガイドライン2016では、OITを食物アレルギーの一般診療として推奨しない。
  • OIT実施施設は、①食物アレルギー診療を熟知した専門医(日常的に食物経口負荷試験を実施し、症状誘発時の対応が十分に行える医師)である、②OITの定義、対象者の選択、作用機序、有効性、副反応とその対応について知識・経験がある、③倫理委員会の承認を得て患者及び保護者に十分なインフォームド・コンセントを行っている、④症状出現時の救急対応に万全を期している、の条件を満たして実施すべきである。
  • OITの対象者の選択基準は、①食物経口負荷試験で診断された即時型食物アレルギーである、②自然経過では早期に耐性獲得が期待できない、の条件を満たす患者とする。
  • 患者の一部では治療を中断すると症状誘発閾値が元に戻ることや摂取後の運動により症状が誘発されることがある。
  • 治療を終了した後に再び症状が誘発される例もあるため、OIT終了後も経過観察する必要がある。
  • 好酸球性食道炎・腸炎など即時型症状以外の副反応も報告されている。
  • 抗IgE抗体製剤の併用や少量のアレルゲン摂取を目標としたOITでは重篤な副反応が減ることが報告されている。
食物アレルギー診療ガイドライン 2016