食物経口負荷試験
定義
⾷物経⼝負荷試験(OFC)はアレルギーが確定しているか疑われる⾷品を単回または複数回に分割して摂取させ、症状の有無を確認する検査である。
⾷物アレルギー診療ガイドライン2021(案)
目的
「⾷物アレルギーの確定診断(原因アレルゲンの同定)」、「安全摂取可能量の決定および耐性獲得の診断」の2つに分類される。
消化管アレルギーの負荷試験に関しては「新⽣児・乳児⾷物蛋⽩誘発胃腸症診療ガイドライン」を参照
適用
- 乳児を含めた⼩児〜成⼈において実施可能である。
- OFCにより得られる患者の利益が症状誘発のリスクより⼤きいと判断できる場合に実施する。
- 基礎疾患や合併するアレルギー疾患の症状がコントロールされている状態で実施する。
リスク評価
重篤な症状を誘発しやすい要因は以下の通りである。特にコントロール不良の気管⽀喘息は致死的なアナフィラキシーのリスクとなるため、⽇頃から適切な⻑期管理薬を使⽤してコントロール状態を良好に保つ。
実施する医療機関の分類と役割
⾷物経⼝負荷試験の⼿引き2020
実施する医療機関の選択
⾷物摂取に関連した病歴、⾷物の種類、特異的IgE抗体価、原因⾷物の摂取状況をもとに実施する医療機関を選択する。
完全除去例の場合
⾷物経⼝負荷試験の⼿引き2020
微量・少量の原因⾷物が摂取可能な症例の場合
アナフィラキシー既往例は、⽇常的に実施している医療機関または専⾨の医療機関での実施を推奨する。
方法
- OFCでは、アナフィラキシーなど、重篤な症状が誘発される可能性があり、⽂書による説明と同意の下、緊急対応が可能な体制を整備して実施する。
- 施設の状況や患者のリスクに応じて、外来または⼊院OFCを選択する。
- 単回または2〜3回に分割する。分割して摂取する場合、摂取間隔は30分以上が望ましい(ただし、鶏卵は1時間程度が望ましい)(図7)。
- 総負荷量は少量、中等量、⽇常摂取量の3段階に分けられ(表11)、原因⾷物の摂取状況と⾃施設の条件を考慮して総負荷量を決める(P18総負荷量の選択を参照)。
- 微量・少量の原因⾷物を摂取している症例の場合は、症状なく摂取できる原因⾷物の量より多い総負荷量を設定する。
- 少量のOFCが陰性であれば中等量のOFCを実施し、中等量のOFCが陰性であれば⽇常摂取量のOFCを実施する。
- 中等量のOFCは、総負荷量をいくつかの段階に設定し、少ない総負荷量から段階的に増量し実施することもできる。
- OFCはできるだけ低年齢から施⾏することで、⾷べられる⾷品を増やし、早期に除去解除ができるように計画する。詳細は「⾷物経⼝負荷試験の⼿引き2020」参照
分割方法および摂取間隔の例
⾷物経⼝負荷試験の⼿引き2020
総負荷量の例
⾷物経⼝負荷試験の⼿引き2020
総負荷量の選択
※特異的IgE抗体価(sIgE)はImmunoCAP法を基準とした。
完全除去例の場合
(1)⼀般の医療機関
原則として少量
(2)⽇常的に実施している医療機関
【ピーナッツ・⽊の実類】
- 原則として総負荷量は「少量」とする。
- アナフィラキシーの既往がある場合には、専⾨の医療機関への紹介を考慮する。⾷物経⼝負荷試験の⼿引き2020
微量・少量の原因⾷物が摂取可能な症例の場合
⼀般および⽇常的に実施している医療機関
- 症状なく摂取できる原因⾷物の量より多い総負荷量を設定する。例)少量の原因⾷物が摂取可能 →中等量のOFC
例)中等量の原因⾷物が摂取可能 →必要に応じて⽇常摂取量のOFC - 中等量のOFCは、総負荷量をいくつかの段階に設定し、少ない総負荷量から段階的に増量し実施することもできる。
結果判定
- 陽性の判断:OFCで摂取直後から数時間までに明らかな症状が誘発された場合に陽性と判定する。遅延型反応もあるため、翌⽇以降も症状の有無を観察するように指導し、その結果を加味して最終的に判定する。
- 判定保留の判断:軽微な症状や主観的な症状の場合には、判定保留として再度のOFCまたは、⾃宅での反復摂取による症状の再現性を加味して最終的に判定する。Miura T, et al. Pediatr Allergy Immunol 2018;29:66-71
- 陰性の判断:OFCで症状が誘発されず、その後⾃宅での反復摂取により、確実に摂取できることを確認し、最終的に陰性と判定する。Yanagida N, et al. Pediatr Allergy Immunol 2021;32:170-6
- OFC結果に基づき具体的に⾷べられる⾷品を⽰し、⽣活の質の改善につとめる。
実施施設の認定と保険診療
OFCは保険適応となっており、基準を満たした施設※において9歳未満の患者に、年2回に限り、1000点を算定できる(負荷試験⾷の費⽤含む)。⼊院ではDPC対象病院かどうか、基準を満たすかどうかで算定⽅法が異なる(表12)。
※⼩児⾷物経⼝負荷検査の施設基準
- ⼩児科を標榜している保険医療機関
- ⼩児⾷物アレルギーの診断及び治療の経験を10年以上有する⼩児科を担当する常勤の医師が1名以上配置されている。
- 急変時等の緊急事態に対応するための体制その他当該検査を⾏うための体制が整備されている。
参考資料
海⽼澤元宏 平成22年度厚⽣労働科学研究班報告書