食物経口負荷試験

詳細は「食物経口負荷試験の手引き2023」を参照

定義

食物経口負荷試験(OFC)はアレルギーが確定しているか疑われる食品を単回または複数回に分割して摂取させ、症状の有無を確認する検査である。

食物アレルギー診療ガイドライン2021

目的

「食物アレルギーの確定診断(原因アレルゲンの同定)」、「安全摂取可能量の決定および耐性獲得の診断」の2つに分類される。

表10 食物経口負荷試験の目的

消化管アレルギーの負荷試験に関しては「新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症診療ガイドライン」および
国際コンセンサスガイドライン(Nowak-Wegrzyn A, et al. J Allergy Clin Immunol 2017;139:1111-26)を参照

適用

  • 乳児を含めた小児〜成人において実施可能である。
  • OFCにより得られる患者の利益が症状誘発のリスクより大きいと判断できる場合に実施する。
  • 基礎疾患や合併するアレルギー疾患の症状がコントロールされている状態で実施する。

リスク評価

重篤な症状を誘発しやすい要因は以下の通りである。特にコントロール不良の気管支喘息は致死的なアナフィラキシーのリスクとなるため、日頃から適切な長期管理薬を使用してコントロール状態を良好に保つ。

表11 重篤な症状を誘発しやすい要因

実施する医療機関の分類と役割

表12 実施する医療機関の分類と役割

実施する医療機関の選択

食物摂取に関連した病歴、食物の種類、特異的IgE抗体価、原因食物の摂取状況をもとに実施する医療機関を選択する。ただし、成人期発症のOFCは専門の医療機関で実施すべきである。

完全除去例の場合

図6 食物経口負荷試験を実施する医療機関の選択

微量・少量の原因食物が摂取可能な症例の場合

アナフィラキシー既往例は、日常的に実施している医療機関または専門の医療機関での実施を推奨する。

方法

  • OFCでは、アナフィラキシーなど、重篤な症状が誘発される可能性があり、文書による説明と同意の下、緊
    急対応が可能な体制を整備して実施する。
  • 施設の状況や患者のリスクに応じて、外来または入院OFCを選択する。
  • 単回または2〜3回に分割する。分割して摂取する場合、摂取間隔は30分以上が望ましい(ただし、鶏卵は1時間程度が望ましい)(図7)。
  • 総負荷量は少量、中等量、日常摂取量の3段階に分けられ(表13)、原因食物の摂取状況と自施設の条件を考慮して総負荷量を決める。
  • 微量・少量の原因食物を摂取している症例の場合は、症状なく摂取できる原因食物の量より多い総負荷量を設定する。
  • 少量のOFCが陰性であれば中等量のOFCを実施し、中等量のOFCが陰性であれば日常摂取量のOFCを実施する。
  • 中等量のOFCは総負荷量の設定に幅があるため、段階的に少ない総負荷量から実施することもできる。
  • OFCはできるだけ低年齢から施行することで、食べられる食品を増やし、早期に除去解除ができるように計画する。
  • 学童や成人で心因反応が関与していると疑われる場合や主観的な症状のみを訴える場合には、ジュースやハンバーグなどのマスキング媒体に混ぜたブラインド法にて実施する。

分割方法および摂取間隔の例

図7 分割方法および摂取間隔の例

総負荷量の例

表13 総負荷量の例

総負荷量の選択

※特異的IgE抗体価(sIgE)はImmunoCAP法を基準とした。

完全除去例の場合

(1)一般の医療機関

原則として少量

(2)日常的に実施している医療機関

【鶏卵】

図8 総負荷量を選択するためのフローチャート(鶏卵)

【牛乳】

図9 総負荷量を選択するためのフローチャート(牛乳)

【小麦】

図10 総負荷量を選択するためのフローチャート(小麦)

【ピーナッツ・木の実類】
  • 原則として総負荷量は「少量」とする。
  • アナフィラキシーの既往がある場合には、専門の医療機関への紹介を考慮する。

微量・少量の原因食物が摂取可能な症例の場合

一般および日常的に実施している医療機関

  • 症状なく摂取できる原因食物の量より多い総負荷量を設定する。

    例)少量の原因食物が摂取可能 → 中等量のOFC

    中等量の原因食物が摂取可能 → 必要に応じて日常摂取量のOFC

  • 中等量のOFCは、総負荷量をいくつかの段階に設定し、少ない総負荷量から段階的に増量し実施することもできる。

結果判定

  • 陽性の判断:OFCで摂取直後から数時間までに明らかな症状が誘発された場合に陽性と判定する。遅延型反応もあるため、翌日以降も症状の有無を観察するように指導し、その結果を加味して最終的に判定する。
  • 判定保留の判断: 軽微な症状や主観的な症状の場合には、判定保留として再度のOFCまたは、自宅での反復摂取による症状の再現性を加味して最終的に判定する。
    Miura T, et al. Pediatr Allergy Immunol 2018;29:66-71
  • 陰性の判断:OFCで症状が誘発されず、その後自宅での反復摂取により、確実に摂取できることを確認し、最終的に陰性と判定する。
    Yanagida N, et al. Pediatr Allergy Immunol 2021;32:170-6
  • OFC結果に基づき具体的に食べられる食品を示し、生活の質の改善につとめる。

実施施設の認定と保険診療

OFCは保険適応となっており、基準を満たした施設において16歳未満の患者に、年3回に限り、1000点を算定できる(負荷試験食の費用含む)。入院ではDPC対象病院においてすべての年齢層の患者に対して算定可能である。

表14 算定方法

参考資料
表15 厚生労働科学研究班(39施設)による食物経口負荷試験の結果

海老澤元宏 平成22年度厚生労働科学研究班報告書