準備編
社会的環境の整備
OFCを施行する医師に求められる条件
OFCでは患者に症状を誘発させるリスクを伴うため、下記の条件を満たした医師が実施すべきである。
- 食物アレルギー診療に関する知識・経験を有している。
- 患者ごとにOFCを行う目的を理解し、その適用および適切な方法を選択できる。
- 症状誘発時の対応が十分に行える。
- 負荷試験食を準備または説明できる。
実施施設の認定と保険診療
OFCは保険適応となっており、基準を満たした施設※において16歳未満の患者に、年3回に限り、1000点を算定できる(負荷試験食の費用含む)。入院ではDPC対象病院においてすべての年齢層の患者に対して算定可能である(表5)。
※小児食物経口負荷検査の施設基準
- 小児科を標榜している保険医療機関
- 小児食物アレルギーの診断及び治療の経験を10年以上有する小児科を担当する常勤の医師が1名以上配置されている。
- 急変時等の緊急事態に対応するための体制その他当該検査を行うための体制が整備されている。
実施医療機関の分類と役割
OFCを実施する医療機関を表6のように分類する。自施設でOFCの実施が難しい症例は、近隣の医療機関と病診連携し、早期にOFCを実施できるように配慮する。安易に除去を継続することは避ける。
※OFCを実施している医療機関
日本小児科学会専門医研修プログラム基幹施設・連携施設におけるOFC実施状況は「食物アレルギー研究会」ホームページで検索できる。
安全対策および体制の整備
施設内の体制整備
OFCの実施には、症状出現時に迅速に対応できる体制が必須である。
- 専任の医師または看護師を配置することが望ましい。
- 症状出現時の対応についてスタッフが十分に理解する必要がある。
- 症状出現時の対応マニュアルを作成してあることが望ましい。
実施場所
施設の状況や患者のリスクに応じて、外来OFCまたは入院OFCを選択する。
薬剤・医療備品の準備
症状出現時の対応のための薬剤および医療備品の準備を行う。
病院給食の準備
- 入院で実施する場合には、入院中の食事提供による誤食・誤配膳に注意する。
- 入院時の除去食物の確認、調理工程の工夫が必要である。
- アレルギー症状出現頻度の高い原因食物をすべて使用していない定型のメニューを活用してもよい。柳田紀之 他. 日小ア誌 2014;28:835-45
負荷試験食の準備
事前に医療機関で提供するのか、保護者が準備するのか自施設の方針を決める。
(1)医療機関で提供する場合
- 栄養管理室の協力が得られる場合には、レシピと調理方法・総負荷量を決めておくと定型化した負荷試験食を提供できる。
- 負荷試験食の情報(レシピなど)を患者や保護者に提供し、自宅でも摂取できるように工夫する。
- OFC用の食品粉末を使用すると簡便に実施できる。Yanagida N, et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 2019;7:716-8
(2)保護者が準備する場合
- 総負荷量・調理方法について文書を用いて説明する。
- 加熱など調理方法により抗原性の変化する負荷食物では、レシピと調理方法を定型化すると均一なOFCが実施できる。
- 加工食品を用いる場合には、製造日、販売地域の違いや原材料の規格変更など、タンパク質含有量が販売時期により異なることがあるため注意が必要である。
- 代表的な負荷食品には、鶏卵(卵をつなぎに使った料理、固ゆで卵白)、牛乳(ヨーグルトや牛乳)、小麦(うどん、パン)、ピーナッツ・木の実類(ローストされているピーナッツ・ナッツそのもの、ピーナッツバター)などがある。
説明・同意
- OFCの具体的な方法、症状誘発リスクについて患者および保護者に説明し、文書で同意を得る。
- イラストなどを用いた説明文書を作成し、患者にもできるだけわかりやすいように説明する。
結果に影響する薬剤
- OFCの結果に影響すると考えられる薬剤は事前に一定期間中止する(表8)。
- 吸入ステロイド薬、点鼻薬、点眼薬、外用薬については、中止する必要はない。ただし、吸入β2刺激薬、吸入ステロイド薬と吸入β2刺激薬を合わせた配合剤、β2刺激薬の貼付剤は中止する。
- アレルギー疾患に対する生物学的製剤(オマリズマブなど)は症状誘発の閾値を上昇させる可能性があるため、結果の解釈には注意が必要である。
- 基礎疾患がある患者においてアナフィラキシーを増悪させることが知られている薬剤(β遮断薬、ACE阻害薬、NSAIDs、アルコール、鎮静剤、睡眠薬、抗うつ剤、嗜好性薬物)を継続して服用が必要な場合には負荷試験の適応の是非を慎重に判断すべきである。