即時型症状以外の負荷試験

食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)

通常のOFCとは異なる事項のみを本項で記す。

目的

  • FDEIAを疑う患者に対して行う負荷試験の目的は、「FDEIAの確定診断(原因アレルゲンの同定)」である。

適用

  • 特定の食物を年齢相当一食分以上摂取し、その後運動したときにのみ、即時型アレルギー症状の誘発が疑われる場合。
  • OFCの経験が豊富な専門の施設で、入院での実施が望ましい。
  • 運動負荷に対応できる能力とコミュニケーション能力を有するもの。
  • FDEIAの負荷試験では重篤な症状が誘発されやすいため、表2に示した事項に注意しながらリスク評価し、高齢者は合併症や転倒リスクなどを考慮し適用を判断する。

方法

負荷試験のプロトコールを以下に記す。

図8 FDEIAにおける負荷試験のプロトコール

  • 運動負荷による転倒のリスクが高い患者(高齢者等)の場合は、プロトコールの2)で「食物+運動負荷」ではなく、「アスピリン+食物負荷(+運動なし)」を優先して行う。
  • アスピリン喘息(NERD)やアスピリンに対する即時型アレルギーなどアスピリン投与の禁忌疾患の既往がある場合は3)のプロトコールは行わない。
  • アスピリン内服歴のない患者では、3)のプロトコールの前に、アスピリン内服のみを負荷することにより症状が誘発されないことを確認する。
  • 運動負荷の際に、喘鳴のみが出る場合は運動誘発喘息を、2-4mmの小さな膨疹のみが誘発された場合はコリン性蕁麻疹を鑑別疾患として考慮する。
略語解説
FDEIA
food-dependent exercise-induced anaphylaxis

結果判定

  • 2)もしくは3)のプロトコールで、軽度でも症状が確認されば陽性と判定し、直ちに負荷試験を中止する。

試験後の指導

【陽性の場合】

  • 運動の2-4時間前は、原因食物の摂取の禁止を指導する。
  • 歩行などの軽度の運動でも症状が誘発される患者も存在することに留意して生活指導を行う。
  • 運動のみならず、アスピリン内服、寝不足、疲労、感冒、ストレス、月経前状態、アルコール摂取、空腹、入浴、高温・寒冷・湿度、花粉飛散時期なども症状誘発の誘因になることが知られているため、患者のライフスタイルに応じて注意を促す。
  • 経過観察中に誘発閾値が低下して、運動の組み合わせが無くても症状が誘発されるエピソードを持つようになることがある。このような場合は、食事・生活指導内容を見直す必要がある。
  • 運動そのものの制限の必要はない。

【陰性の場合】

  • FDEIAの負荷試験は感度が低いため、FDEIAの可能性は完全に否定できないことに留意する。
  • 偽陰性の可能性を考慮して、負荷試験を反復することもある。
略語解説
NERD
NSAIDs-exacerbated respiratory disease
NSAIDs
non-steroidal anti-inflammatory drugs

食物蛋白誘発胃腸症(Non-IgE-GIFAs)

  • Non-IgE-GIFAs全体としては特に新生児の牛乳由来調製粉乳(普通ミルク)を原因とするものなど連日摂取している場合には診断のために、まず食物除去試験を行い症状の改善を確認する。
  • OFCは重症度や施設の状況も十分に考慮して行うことが望ましい。
  • 事前に抗原特異的IgE抗体価を確認し、即時型反応を起こす可能性がある場合には対応できるように準備する。
  • 確立されたOFCの方法が示されているのは食物蛋白誘発胃腸炎症候群(FPIES)のみである。
  • FPIESについては、急性FPIESについては国際ガイドラインに記載されている方法をそのまま利用できる。慢性FPIESについてはOFC陽性時に起こる症状が急性FPIES症状とされており、方法は同じである。
  • ただ、わが国では慢性FPIESの診断基準を満たさないが、慢性の経過を示す例があり、急性FPIES症状が出現しない場合には、少量から段階的に数日かけて増量し観察することが望ましい。
  • 一定の見解はないが、急性FPIES以外は、少なくとも症状が十分に安定した後に少量から段階的に数日かけて増量し観察する。2週間程度の継続摂取で判断される場合もある。またFPIAPやFPEのOFCは病院での実施を必ずしも必要としていない。

食物蛋白誘発胃腸炎症候群(FPIES)

  • OFC陽性時は輸液が必要となるため、必要に応じて点滴ルートを確保しておく。
  • 即時型症状が出現する可能性がなければ、症状を認めた摂取量を参考に0.3g/kg(タンパク量)まで確認されることが多い。OFC時も2-3回に分けて20〜30分毎に負荷する(単回投与の場合もある)。少量から何回かのOFCが行われることもある。
    International FPIES association (https://fpies.org/)
    Nowak-Wegrzyn A, et al. J Allergy Clin Immunol 2017;139:1111-26 引用改変
  • 6時間は慎重に経過観察し、症状出現に備えてバイタルサインをモニタリングし、生理食塩水(細胞外液輸液)、メチルプレドニゾロン*を準備しておく。オンダンセトロン(保険適用外)を準備することもある。
    *メチルプレドニゾロンはソル・メドロール静注用40mgに乳糖が含有されているため、牛乳アレルギー患者がアナフィラキシーを起こす場合がある。
  • 症状が出現した場合には重症度に合わせて治療を行う。施設によってはCRPやTARCを参考にしている場合もある(保険適用外)。

表14 急性FPEIS(有症状時・OFC陽性時)の治療

  • 診断よりも耐性獲得のためのOFCであることが多い。耐性獲得の確認は半年から1年後に実施する。負荷試験の経験が豊富な施設で重症度を考慮して実施する。
    新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症診療ガイドライン 2019改訂
  • OFC陰性の場合には、自宅でも同量で症状が出現しないことを確認する。日常摂取量までの増量は原因食物と重症度をもとに計画する。日常摂取量を食べられることが確認できれば除去解除とする。

表15 FPEIS-OFCの判定基準

略語解説
FPE
food protein-induced enteropathy
FPIAP
food protein-induced allergic proctocolitis
FPIES
food protein-induced enterocolitis syndrome
Non-IgE-GIFAsnon-IgE
mediated gastrointestinal food allergies