牛乳アレルギー
食品の特徴と除去の考え方
- 牛乳のアレルゲンは、加熱によるアレルゲン性の変化を受けにくい。このため “食べられる範囲”は、牛乳・乳製品中のたんぱく質量を参考に摂取指導ができる。
- 牛肉は、牛乳とアレルゲンが異なるため、基本的に除去する必要はない。
- 牛乳以外のやぎ乳やめん羊乳などは、アレルギー表示の範囲外であるが、牛乳と強い交差抗原性があり、使用できない。
- アレルギー用ミルク(特別用途食品・ミルクアレルゲン除去食品)は、牛乳タンパク質を酵素分解して、分子量を小さくした「加水分解乳」と、アミノ酸を混合してミルクの組成に近づけた「アミノ酸乳」がある。最大分子量の小さいものほどアレルギー反応を起こしにくい。アレルギー用ミルクの選択は、医師の指示にしたがって使用する。
- 新生児・乳児消化管アレルギー患者や重症な牛乳アレルギー患者は、加水分解乳で症状が誘発される可能性がある。
- アレルギー用ミルクのみを栄養源とする場合には、セレンなどの微量栄養素の補充が必要である。栄養素の補充については医師の指示に従う。
- 調製粉末大豆乳はアレルギー用ミルクではないが、大豆を主原料とした育児用粉乳である。乳成分は含まれていない。
- ペプチドミルクは、タンパク質の酵素分解が不十分でアレルゲンが残存しており、牛乳アレルギー児には使用できない。
- 加工食品の原材料には、「乳」の文字をもつ紛らわしい表記が多く、十分な理解が必要である。
- 乳糖には、ごく微量(数μg/g)のたんぱく質が含まれる場合があるが、加工食品中の原材料レベルでの除去が必要な場合はまれである。摂取可否については医師に確認する。
栄養食事指導のポイント
- 牛乳を除去すると、カルシウム摂取量が不足するため、他の食品で補う。
- アレルギー用ミルクは、乳児期の母乳の代替のほか、カルシウム補給として利用できる。特有のアミノ酸臭があり、月齢が進むと飲みづらいことがある。果物ピューレやココアなどで風味をつけたり、ダシや豆乳の味を生かした料理に利用するなどの工夫をする。
- 飲用乳の代替には、豆乳や大豆乳(調製粉末大豆乳)を用いることもできる。豆乳は、牛乳と比較して、カルシウム含有量が少ないことに留意する。
- 乳製品の代替に、豆乳で作られたヨーグルトやアイスクリーム、生クリームなどが市販されている。
牛乳アレルギー 完全除去の場合の食事
①食べられないもの
牛乳と牛乳を含む加工食品
★基本的に除去する必要のないもの: 牛肉
★基本的に除去する必要のないもの: 牛肉
牛乳を含む加工食品の例
ヨーグルト、チーズ、バター、生クリーム、全粉乳、 脱脂粉乳、一般の調製粉乳、れん乳、乳酸菌飲料、はっ酵乳、アイスクリーム、パン、カレーやシチューのルウ、肉類加工品(ハム、ウインナーなど)
洋菓子類(チョコレートなど)、調味料の一部 など
②牛乳が利用できない場合の調理の工夫
ホワイトソースなどのクリーム系の料理
- じゃがいもをすりおろしたり、コーンクリーム缶を利用する。
- 植物油や乳不使用マーガリン、小麦粉や米粉、豆乳でルウを作る。
- 市販のアレルギー用ルウを利用する。
洋菓子の材料
- 豆乳やココナッツミルク、アレルギー用ミルクを利用する。
- 豆乳から作られたホイップクリームを利用する。
③牛乳の主な栄養素と代替栄養
☆主食(ごはん、パン、麺など)、主菜(肉、魚、大豆製品など)、副菜(野菜、芋類、果物など)のバランスに配慮する。
④牛乳のアレルギー表示
1) 容器包装された加工食品
牛乳は容器包装された加工食品 に微量でも含まれている場合、必ず表示する義務がある。
したがって、原材料表示欄に牛乳に関する表記がなければ摂取できる。
2)容器包装されていない料理や加工食品(飲食店、惣菜など)
容器包装されていない料理や加工食品には、どのような原材料であっても表示の義務はない。特に微量で発症したり、重篤な症状をおこしたりする可能性がある場合は販売者に直接確認して利用する。
牛乳アレルギー の“食べられる範囲” の広げ方
- 牛乳や乳製品は、乳酸発酵や加熱による症状の出やすさの違いが少ないため、タンパク質量を基にした“食べられる範囲”の判断が概ね可能である。
- 食品によって含まれるたんぱく質量が異なる。解除指導では、たんぱく質量の少ないバターなどの食品から導入し、たんぱく質量の多いチーズは、他の乳製品の摂取が可能となってから導入することが望ましい。
下記の食物経口負荷試験結果が陰性だった場合の指導
①総負荷量が少量(牛乳3ml )
⇒負荷試験で摂取したものと同じ食品を負荷試験で摂取した量まで食べることができるが、その他の加工品の摂取は難しい。
②総負荷量が中等量(牛乳15~50ml )
⇒負荷試験で摂取したものと同じ食品を負荷試験で摂取した量まで食べることができる。 さらに、その摂取を数回繰り返して問題がみられなければ、医師の指示のもとで以下の表を参考に他の加工品を試すことができる。
③総負荷量が日常摂取量(牛乳200ml)
⇒負荷試験で摂取したものと同じ食品を負荷試験で摂取した量まで食べることができる。 その摂取量を数回繰り返して問題がみられなければ、医師の指示のもとで牛乳を含む加工食品の摂取が可能となる。 さらに、摂取後の運動なども考慮して日常生活に支障がない量まで摂取できることを確認し、自宅以外(集団給食や外食など)でも除去の対応は不要となる。