食物アレルギーの治療・管理の原則
正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去
【必要最小限の除去とは】
- 食べると症状が誘発される食物(原因食物)だけを除去する
過剰な除去を避ける。「念のため」「心配だから」という理由だけで除去をしない。 - 原因食物でも、症状が誘発されない“食べられる範囲”までは食べることが出来る
食物経口負荷試験で症状が誘発された食物であっても、症状を誘発しない範囲の量の摂取や、加熱・調理により症状無く食べられるものは、除去せずに摂取する。
食べると症状が誘発される食物だけを除去する
- 保護者の心配や不安から、食物アレルギーの頻度の多い食物を不要に避けたり、食物アレルゲンに関する誤った知識による不要な除去はしない。
- 特異的IgE抗体検査や皮膚試験から原因と疑われ除去している場合には、必要に応じて食物経口負荷試験で症状が誘発されるか確認する。
“食べられる範囲”は医師が判断する
- “食べられる範囲”は、症状が誘発されずに食べられる原因食物の量を指し、患者によって大きく異なる。このため、食物経口負荷試験などで症状が誘発されない量を確認し、その量までを“食べられる範囲”として自宅で食べるように医師が指示する。ただし、 “食べられる範囲”でも患者の体調変化や運動などに伴いアレルギー症状が誘発される可能性があるので注意を要する。
- “食べられる範囲”を超えて食べると、症状が誘発される可能性がある。このため食べたことのない量を自宅などで少しずつ試すことは推奨されていない。
コラム 食物アレルギーの発症予防
- ハイリスク児(両親・同胞に一人以上のアレルギー患者がいる児)に対する妊娠中と授乳中の母親の食物除去は推奨されていない。
- 食物アレルギーの発症予防を目的に離乳食の開始を遅らせることは推奨されていない。
- アトピー性皮膚炎の乳児では、アトピー性皮膚炎の治療を十分に行った上で、鶏卵アレルギー発症予防を目的に、医師の管理のもと、生後6か月から鶏卵の微量摂取を開始することが推奨されている。日本小児アレルギー学会 鶏卵アレルギー発症予防に関する提言
- 米国では、ピーナッツアレルギー発症予防を目的に離乳時期の早期にピーナッツを含む食品の摂取を開始することが推奨されている。ただし、重症の湿疹を持つハイリスク児には皮膚プリックテストなどを行い、陽性者には病院内で試験摂取又は専門医へ紹介など、慎重な対応を求めている。