小麦アレルギー
食品の特徴と除去の考え方
- 大麦やライ麦などの麦類と小麦は、交差抗原性が知られている。しかしすべての麦類の除去が必要となることは少ない。
- 麦茶は大麦が原材料で、タンパク質含有量もごく微量のため、除去が必要なことはまれである。
- 米や他の雑穀類(ひえ、あわ、きび、たかきびなど)は、摂取することができる。
- 醤油の原材料に利用される小麦は、醸造過程で小麦アレルゲンが消失する。したがって原材料に小麦の表示があっても、基本的に醤油を除去する必要はない。
- 食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因食物として最も頻度が高い。
栄養食事指導のポイント
- 主食は、米などを中心に、小麦以外の食品をバランスよく摂取すれば、栄養素不足は生じにくい。
- 小麦の代替品に米や雑穀、とうもろこし粉を使ったパン・めん類などが市販されている。小麦以外の粉やでんぷんを料理に取り入れることで、料理のレパートリーを広げることができる。
- 小売店で販売される「米粉パン」は、小麦アレルゲンであるグルテンを使用していることが多いため必ず確認する。
- 給食では、押し麦や米粒麦、もち麦などの大麦加工品を使用することがある。大麦摂取の可否は、個別に確認の上で給食対応を決定する。
小麦アレルギー 完全除去の場合の食事
①食べられないもの
★基本的に除去する必要のないもの: 醤油、穀物酢
小麦粉:薄力粉、中力粉、強力粉、デュラムセモリナ小麦
小麦を含む加工食品の例
パン、うどん、マカロニ、スパゲティ、中華麺、 麩、餃子や春巻の皮、お好み焼き、たこ焼き、天ぷら、とんかつなどの揚げもの、フライ、シチューやカレーのルゥ、洋菓子類(ケーキなど)、和菓子(饅頭など)
*大麦の摂取可否は主治医の指示に従う。
②小麦が利用できない場合の調理の工夫
ルウ
米粉や片栗粉などのでんぷん、すりおろしたいもなどで代用する。
揚げものの衣
コーンフレーク、米粉パンのパン粉や砕いた春雨で代用する。
パンやケーキの生地
米粉や雑穀粉、大豆粉、いも、おからなどを生地として代用する。
市販の米パンを利用することもできる。グルテンフリーのものを選ぶ。
麺
市販の米麺や雑穀麺を利用する。
③小麦の主な栄養素と代替栄養
☆主食(ごはん、米麺、米パンなど)、主菜(肉、魚、大豆製品など)、副菜(野菜、芋類、果物など)のバランスに配慮する。
④小麦のアレルギー表示
1) 容器包装された加工食品
小麦は容器包装された加工食品に微量でも含まれている場合、必ず表示する義務がある。
したがって、原材料表示欄に小麦に関する表記がなければ摂取できる。
- 小麦の代替表記:こむぎ、コムギ
- 小麦の特定加工食品については、P32を参照
- 「麦芽糖・麦芽・ホップ」は除去する必要はない
2)容器包装されていない料理や加工食品(飲食店、惣菜など)
容器包装されていない料理や加工食品には、どのような原材料であっても表示の義務はない。特に微量で発症したり、重篤な症状をおこしたりする可能性がある場合は販売者に直接確認して利用する。
小麦アレルギー の“食べられる範囲” の広げ方
小麦製品は、加熱や加工に伴う症状の出やすさの違いが少ないため、タンパク質量を基にした“食べられる範囲”の判断が概ね可能である。
下記の食物経口負荷試験結果が陰性だった場合の指導
①総負荷量が少量( うどん2~3g )
⇒負荷試験で摂取したものと同じ食品を負荷試験で摂取した量まで食べることができるが、その他の加工品の摂取は難しい。
②総負荷量が中等量(うどん15~50g )
⇒負荷試験で摂取したものと同じ食品を負荷試験で摂取した量まで食べることができる。
さらに、その摂取を数回繰り返して問題がみられなければ、医師の指示のもとで以下の表を参考に他の加工品を試すことができる。
③総負荷量が日常摂取量(うどん200g、6枚切り食パン1枚)
⇒負荷試験で摂取したものと同じ食品を負荷試験で摂取した量まで食べることができる。
その摂取量を数回繰り返して問題がみられなければ、医師の指示のもとで小麦を含む加工食品の摂取が可能となる。
さらに、摂取後の運動なども考慮して日常生活に支障がない量まで摂取できることを確認し、自宅以外(集団給食や外食など)でも除去の対応は不要となる。